眠った村と壊れた橋。

レビュー多。

『EXIT TUNES PRESENTS GUMism from Megpoid(Vocaloid)』へのAmazonレビューの写し

★★★★☆『#10のトラック


「GUMIの歌がフィーチャーされた中で、『AGAINST』が最も印象的に耳に残った。

 BuzzGという人はGUMIの歌わせ方が巧みだ。最初のデスボイスのような彼女のかすれ声は、その後の冴えた声をよりクリアーに聞こえるようにするための優れた工夫である。その差異はGUMIの声を実際より美しいと錯覚させる。
 曲作りも素晴らしい。重厚なヘヴィメタサウンドは、深刻で切実で重苦しい歌詞と絶妙にマッチしている。
 さてその歌詞であるが、これが中々難解だ。ブックレットには、題は「against the war」の略だとある。ただ、題が示す反戦のメッセージはかなり婉曲的だ。
 歌中に描かれた世界では、この世は憎しみによって荒んでおり、段々と壊れつつある。大いなる不幸に遭った歌い手は高い視座からその様子を眺め、半ば傷心気味ではあれ強気に歌声を響かせる。
 しかし、これは反戦歌というよりはむしろ、あるいは反戦歌であると同時に、応援歌である。命ある限り歌い手は、たとえおのれの力が及ばず、望み薄だとしても、"細い手"を持つ者、恐らくそれは孤立した弱い個の人間のことだろう、を励まし続ける。


 退廃の中でやがて死に絶え、望まなかったはずの悲しい幻に落ちる時、人は一体何を思い出すのだろうか。そんな悲しげな問いを、歌い手は星の微光と共に夜空より発している。


 伝えたいことが熱心に詞に込められている、骨のしっかりした歌で痺れます。
 この歌のお陰でBuzzGさんへの関心が増しました!」


EXIT TUNES PRESENTS GUMism from Megpoid(Vocaloid)(ジャケットイラストレーター 左) 【数量限定オリジナルストラップ付き】
EXIT TUNES PRESENTS GUMism from Megpoid(Vocaloid)(ジャケットイラストレーター 左) 【数量限定オリジナルストラップ付き】
エグジットチューンズ
2011-03-16
ミュージック

『EXIT TUNES PRESENTS VOCALOEXIST FEAT. GUMI, IA, MAYU』へのAmazonレビューの写し

★★★★☆『トラック#3のグルーヴ感


「GUMI, IA, MAYUをフィーチャーしたコンピアルバム。

 総計20近い数の歌曲が収録されている中で個人的に最も夢中になったのが、三番目のトラックの『しゃばでぃーば』である。
 「呼ばれて飛び出してぱぱぱのぱ」という摩訶不思議な出だしの、スキャットをもじったようなタイトルが付いたこの歌は、何だかおどけた感じでとても愉快である。全体を通してフィーリングで聴くに適したオノマトペが繁用されており、余計な力を抜いてふわりPの独特な音楽世界に浸ると、陽気な雰囲気が中毒的に癖になる。パーティーチックにアップテンポな曲調と喚声が本当に賑やかで楽しい。途中の流れるような体操パートなんて身体が歌詞に合わせて勝手に動きそうになる。じっと聴いているのが退屈になるような、要するにポップなのだが、それだけの表現に留まらず、何と言うのか、同調を誘発するような圧倒的な魅力がこの歌にはある。


 ところで、このメロディーには思わずほっとさせてくれるような懐かしい感じがありはしないだろうか。正体は一体何なのか少し考えてみると、脳裏を一瞬B.B.クイーンズがかすめた。しかし彼らの歌作りの特徴がふわりPと類似しているのかは今ひとつ分からない。だけど、『踊るポンポコリン』の「ピーヒャラピーヒャラパッパパラパ」と同じような呪文的な歌詞は、『しゃばでぃーば』においても聴く者の耳に面白くて楽しい魔法をかけているに違いない。


 このアルバム随一の珠玉の歌である。」


EXIT TUNES PRESENTS Vocaloexist (ボカロエグジスト) feat.GUMI・IA・MAYU (ジャケットイラストレーター:ヨリ)(数量限定オリジナルストラップ付)
EXIT TUNES PRESENTS Vocaloexist (ボカロエグジスト) feat.GUMI・IA・MAYU (ジャケットイラストレーター:ヨリ)(数量限定オリジナルストラップ付)
エグジットチューンズ
2013-10-02
ミュージック

『恋色病棟』へのAmazonレビューの写し

★★★☆☆『小さな不満』


「『恋色病棟』を目当てに読んだのですが、ちょっと恋人(かれ)の不意打ちが強引かなという印象がありました。

 元々OSTERさんのPVを見て気に入っていたので、キスはいいんだけど、その後の押し倒し(…というよりは引き倒し?)は余計なんじゃないかなぁ、とちょっぴり懐疑的になりました。まぁ歌曲の劇化にはある程度のプラスアルファは付き物なんでしょうが。

 まつげ同士がぶつかる音っていう歌詞に準じるなら、不意のキスを濃密に描く方が、強引な真似をするより再現としては忠実でしょうし、それに、不意打ちというのはやはり一発で充分な効果をもたらすものです。それにプラスアルファが加わると、キスだけで心を捉えられなかったという風に受け取られかねません。


 とはいえ、おおむね面白かったです。

 たまという方の絵は素晴らしいです。GUMIのイラストを見たことがありますが、このお話の絵も、何というのか、ボカロの画の一種として確固とした個性があるかと思います。」


恋色病棟 OSTER project コミックコレクション (電撃コミックスNEXT)
恋色病棟 OSTER project コミックコレクション (電撃コミックスNEXT)
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2016-03-25